コロナウィルスが猛威をふるった2019年以降、各地の民謡保存会もその活動を停止させ、盆踊りや発表会での披露、練習会までもが中止に追い込まれた。それに伴って、俚謡 × エムの民謡発掘リリースも中断を余儀なくされた。「今」の民謡にこだわればこそ、唄が止まったコロナ禍中はリリースも止まらざるを得なかったのだ。2024年、状況は徐々に改善
し、コロナ以前から温めていた我々のリリース計画が時を経て遂に実を結んだ。
今回リリースする「ナニャトヤラ」は、岩手県北部と青森の旧南部藩領に跨がった地域に広く伝わる、東北最古といわれる盆踊りだ。「ナニャトヤラ」というワンフレーズをひたすら繰り返すトランシーなこの盆踊りは「謎の歌」として知られ、その由来は諸説ある。有名なものはキリストの墓伝説と共に語られる「ヘブライ語説」だが源流は不明。「田名部おしまこ」「とらじょ様」「天間のみよこ」、更には北海道の代表的民謡である「道南盆唄」など多数の盆踊り唄や仕事唄がこの唄の系譜にあり、東北民謡のファンデーション(基礎)のひとつと言うことができるだろう。
本作は岩手県北部二戸市で活動する二戸市ナニャトヤラ保存会による「ナニャトヤラ」の2002年録音、2015年録音、2023年録音の3バージョンを収録した。この唄に纏わされた「謎の歌」というエキゾチシズムの色眼鏡をワンパンで吹き飛ばす、現場仕様の圧倒的テンション。縦断爆撃のような太鼓と即興で繋がれていく歌詞が鳴り止まない激ヤバな内容となっている。「保存会」を名乗りつつも、力強くナニャトヤラを現代の形にパッタナー(改良・発展)させていく、二戸市ナニャトヤラ保存会は「民謡=古い物語」という固定観念をぶち壊し、コロナ禍を乗り越えて再開した俚謡 × エム民謡発掘シリーズの復活第一弾として相応しい。これが現場の音だ!
注記:本作では「ナニャトヤラ」と表記するが、「ナニャドヤラ」と表記される場合もある。
=作品仕様=
+ 通常ジュエルケース
+ 24頁ブックレット封入、帯付き
+ 解説:俚謡山脈(英訳も掲載)
+ 装丁デザイン:高木紳介 (Soi48)
マスタリング:倉谷拓人
2023年版の録音・ミキシング:SUGAI KEN