
名古屋を拠点に長年にわたって精力的に活動を続けているアーティスト、SODOが2015年に自主リリースしたLP作品。プライベートな空間にそっと足を踏み入れたかのような、親密で静謐な空気感がそのままオープンリールに記録されたような、その場所の時間の流れごと閉じ込められているかのよう。 アルバムの冒頭は、フィールドレコーディングスを用いた静かな導入部から始まり、記憶の奥底に眠っていた風景や匂いが、ふとしたきっかけで蘇ってくるような淡くノスタルジックな感覚を呼び起こします。徐々に姿を現す、ざらついたオルガンの旋律は、美しさの中に不安や陰りをにじませながら、不思議な揺らぎと静けさを心に与えます。むちゃくちゃ良いです!そして破格!
ヨード「MEMORIES」メンバーによる解説文
ヨードの17年の活動の中で、初のフルアルバム。しかし、初期のヨードを知っている人からは意外に思われる音かもしれない。かつてあった、ファンタジックな感触は影をひそめ、シンプルで内省的な世界が広がる。アルバムのテーマは、ヨード(と畔柳)がたどった17年間と、それ以前の人生、タイトルどおり時間や、記憶といったものだ。これは、近年のヨードがずっと追い続けているもので、これに共感した、三ツ矢剛も、テーマを記憶とし、モチーフとして畔柳の姿や人生を追った写真展を開催する。今作の発売記念ライブも、この写真展の期間中、同じ矢田ギャラリー内の、「東文化小劇場」で行われる。
隠れたテーマとしては、「80年代感」がある。ただこれは、ぱっと見でわかるようなものではなく、畔柳の中の、原体験からくるニュアンス。実際、わたしも、畔柳との長期間の会話のなかで、なんとなくイメージをつかめたというようなものだ。聴いた感じは、80年代っぽい感じは、とくにしないかもしれない。
今回のアルバムについては、オールアナログにこだわった録音、編集という制作環境がひとつの特徴だが、オープンリールテープマシンは、すでに生産中止?しており、近年、テープ自体も入手が難しく、マシンのメーカー修理も終了、と、なかなか手が出せないものになっており、今回の制作でも、マシンのたびたびの不調が、何度となく制作を遅らせた。ティアックが最後に修理したマシンが、今回ヨードが使用したオープンリールになったりもした。使える状態の機械に出会うまで、3〜4台ものマシンを、オークションで落札しては、故障し修理に出したり、またオークションで探したりといった感じであった。中古車が買えるほどの予算がそこだけで消えていった。しかし、そこまでするのは、やはり、オープンリールの音の良さがあったからだと思う。いいシステムで聴くほど音が深まり広がるし、いいシステムでなくとも、音の違いはわかるはずである。
最後に、今作の制作に参加しているメンバーを挙げていく。
古賀朋子/ドラム、ヴォーカル(ジョンのサン、葉っぱの裏側シスターズ)
森谷将之/ベース(気分気分)
かみたにけんすけ/ギター
いまをまこと/ドラム(公園、夕食、竹竹バンブー隊など)
西村公一/キーボード(公園)
島田龍平/ミックス(pop office)
松石ゲル/「みえないもの」録音(ザ シロップ、panic smileなど)
吉川英理子/ヴォーカル、シンセサイザー、ジャケットデザイン(ジョンのサン、葉っぱの裏側シスターズ)
三ツ矢剛/写真
畔柳徳宏/ヴォーカル、ギター、キーボードなど
1. memories
2. image
3. みえないもの
4. 海の底
5. 土曜の朝
6. 沈黙の世界
7. 1991年の夏
8. 森に入っていった人
9. 夏の雨