ju sei - 申 (Mousu) (LP)

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国内実験即興/サウンドアートの拠点〈Ftarri〉のサブレーベル〈Meenna〉や老舗レコード店〈円盤〉などからの作品で知られる「ju sei」。ソロ名義「のっぽのグーニー」ではテンテンコ楽曲のリミックスを手掛けた事も知られる田中淳一郎(ギター/作曲)と、ヴォーカリストsei による実験音響系"歌もの"デュオが、大城真主宰の〈Basic Function〉より最新アルバム を発表。

90 年代幻想浮遊系ポップス、フリー・ミュージック、エレクトロアコースティックを経由しつつ、「After Dinner の Haco に憑依した矢野顕子が〈360°records〉から"密室的 KATRA TURANA"として登場したら?」という、特異なミッシング・リンクを体現するような一枚だ。

白昼夢のような記憶の断片、幼少期の無垢、メリーゴーランドの暗い影。それらが幻日の手前 で滲み、亡霊的音響に導かれるように淡々とした語りで紡ぎ上げられていく。祈りのような追憶と、微睡みの隣で手招く逢魔ヶ刻が交錯する。

ニカ・ポップの透徹とミュージックコンクレート的な虚脱が密室の隙間から漏れ出す「一言」、Kate NV〜山口美央子〜クレプスキュール的シンセ・ポップの微かな煌めきを宿す「雪の無関係」、Anestis Logothetis にも通じる磁気テープ的実験と現代的電子音響が交錯する「鱧」。それらが箱庭的な童心とシュルレアリスムの遊戯性の中で接続し、極私的なメタ・アンビエント歌謡の結晶として現れているかのようだ。
"家で生まれた音楽"の果てに立つ、精緻に歪んだホームメイド・ミュージックの詩的記録である。

門脇綱生(Meditations/Sad Disco)

seiさまの歌声は限りなく清潔で、キワキワな可憐さを保持している。
田中淳一郎はやはり完全主義のコンポーザー、一曲一曲の濃縮と洗練が凄まじい。
何もかも代替可能で自動生成もどきの表現が跋扈する堕落したこの世界に、舞い降りた天使とそれを守り抜く騎士(ナイト)がju seiなのだと思う。
私はかつてある人に「お前の映画は誰にも似ていない」と誉められたことを心の糧に生きているが、その言葉をそっくり献呈したい。
ju seiは孤高の中の孤高。マスター・オブ・’ワン&オンリー‘だ!

七里圭(映画監督)

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