
1990年代後半から2000年代前半にかけて、エレクトロニカの時代において一風変わった実験音響作品をリリースしていたレーベルLucky Kitchenを運営していた Alejandra and AeronがBergman & Salinas名義で約18年ぶりの新作を発表!
本作も彼らの真骨頂である、生活音や環境音のフィールド録音の断片をコラージュさせた極上の実験音響となっており、名作「Bousha Blue Blazes」で印象的だったおばあちゃんの歌を思い出させる、Bergman本人の歌声も聴くことができます。子供の絵が施されたカヴァーと美しいブックレットの装丁にも感激。個人的には間違いなく今年一番嬉しいリリースになりました。
以下、レーベルインフォです。
2000年代にスペインや世界各地で営まれていたラッキー・キッチンという名前の特異なレーベルのことを覚えている方はいらっしゃるでしょう。当時の国内音楽雑誌でも取り上げられ、世界中の先鋭的な電子音楽家やサウンド・アーティストの作品を、ときにハンドメイドの手技を残したパッケージに包んでリリースしたレーベルを運営しながら、自身も音楽作品を発表してきたアレハンドラ・サリナスとアーロン・バーグマンのふたりが、現在居住する米ミズーリ州コロンビアで愛娘のアグネスを加えたファミリー・プロジェクトとして活動を再開、実に18年ぶりとなるオリジナル・ニュー・アルバムを発表します。
今回のリリースに尽力し、ラッキー・キッチンからデビュー・アルバム『Organ Leaf』を発表したASUNAが、互いの公友のあり方やレーベルの詳細なヒストリーを封入ブックレットに掲載したロング・エッセイで紹介、さらにそれに応じる形でアレハンドラ・サリナスとアーロン・バーグマンのふたりも本作品や自身の活動のバックボーンをしたためて、CDに収録された「Fullmoon Maple」という約35分のロング・ピースだけでなく、彼らの音楽にまつわる思想のあり方も感じられる特別なパッケージに仕立てました。これまでもそうだったように、アーティスト本人が採集/発見したフィールド録音を随所にしのばせて、世界の一風景、一断片をコラージュしつつ、今回はロバート・ワイアットを思わせるアーロン・バーグマンが歌い、演奏するピアノの弾き語りも登場(目下、ピアノを練習中だというアグネスの演奏も使用されている)、そして、愛娘との日常のやり取りを散りばめることでも社会的存在として血の通った、唯一無二の電子音響作品に仕上がっています。このたおやかな音風景が、現在、大きな力を持ち得ることに希望を感じながら、ぜひ耳を傾けてみてください。