尾崎翠や左川ちか等ロマンチシズムを排した昭和モダニズム文学を着想の源とし、水面の波紋のようなアルペジオに導かれ、揺れ続けては消え入るかの歌は音楽ではなく詩の響きだけが残り、サンプリングのような美しいノイズも混じえ、沈黙は拡大し、シンプルながら幽玄さを持つ非-線的かつ第七感の音楽集。小川美潮「デンキ」のカバー含むバロック的な細部までこだわった不完全なポップへの賛歌、デヴィッド・リンチとヴィム・ヴェンダースの映画が交互に出て来るような全7曲。アルバム・タイトル「lemma」は、数学用語“補題”と仏教用語“直感的な理解”の意を重ねたことに由来する。
-テーマは「追憶」と「複数のペルソナの一致」。幼少期の記憶や匂い、静寂の中にある感覚を手がかりに、自身の内的な断片をひとつに結ぶことを意識しました。-yagihiromi