我方他方 サックス吹き・篠田昌已読本

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大熊ワタル編集/184ページ

没後30年を経て甦る、稀代の音楽家の人と音楽。
生活向上委員会大管弦楽団、じゃがたら、コンポステラ、東京チンドンなどで活躍し、1980年代末から90年代初頭の「時代」を駆け抜けたサックス吹き、篠田昌已(1958-92)。その没後30年と再評価を期して、2008年に少部数だけ発行された入手困難な冊子『コンポステラ★星の広場で』を増補・再構成。新たに本人のインタビューを発掘し、町田康、大友良英、細川周平、平井玄各氏ら一線で活躍する表現者50余名による寄稿を収録する。ミュージシャン篠田昌已の《これまで》と《これから》がここにある!


1970年代末、一世を風靡したフリージャズ・オーケストラ「生活向上委員会」の最年少メンバーとして登場したサックス吹き・篠田昌已は、80年代に入ると「PUNGO」「じゃがたら」「A-Musik」など、カテゴリーを超えて後世に名前の残るバンドに参加し、その忘れがたい音色と演奏、そして人懐こい笑顔により、地下音楽シーンの多くの人に愛される存在となっていった。
80年代末、30歳になる頃、いよいよ自身のグループをまとめ、「篠田昌已ユニット」「COMPOSTELA」「東京チンドン」などで名作を放ち、広く世に認められかけた。しかし幼少期からの重い内臓疾患との闘いは彼のそれ以上の活躍を許さなかった。

音源化された演奏は後世に残り、それなりに広く未知のリスナーにも届いてきただろう。しかし、短い生涯を懸命に生きた彼の人となりや考えは、断片的に文字化されてはきたものの、歳月とともに散逸し、篠田昌已の全体像を一望することが難しくなってきた感は否めない。
〔……〕
この本の元になっているのは、2008年、篠田の生誕50年を記念して企画したライブイベントに合わせて出版したパンフレット『コンポステラ★星の広場で』だが、少部数発行で入手困難となってすでに長い。また内容的にも、やや限られた範囲だったことから、あらたに本書の企画に至った。
2021年ごろから没後30年のタイミングを意識するようになり、増補改訂すべきか折りにふれて検討してきた。そこで大きな力となったのは、30年前の雑誌などを引っ張り出して再読した、篠田に捧げられた一群のテキストの忘れがたい内容のおかげだった。旧パンフでは単に参照文献リストに挙げただけだったこれらの関連テキストを、この機会に何としても集めなくてはと思うようになった。〔……〕
――大熊ワタル「はじめに」より

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