カシオトーンをテーマにした人気コンピレーション・シリーズが第9作目に突入。今回はその特別編として、欧州の伝説的ノイズ・グループであるカポテ・ムジークの創始者であり、かのスタールプラートの運営にも携わりつつ、書ききれないほどの豊富な音楽遍歴でその名を世界に轟かせてきたオランダの電子音楽家、フランス・デ・ワード Frans de Waard を大フィーチャー。なんと今回のコンピレーション全曲を彼がメンバーとして活動するそれぞれ異なる名義のユニットで占拠し、この作品自体がフランス・デ・ワードの音楽活動の足跡を辿るような記念碑的なコンピレーションとなりました。もちろん全曲カシオトーンによる新曲ばかり。カポテ・ムジークは15年ぶりのスタジオ録音による復活作!
収録情報
track1. Kapotte Muziek (カポテ・ムジーク) / VL-1 (acoustic)
1984年にフランス・デ・ワードと Christian Nijs により結成され、88年以降はワードのソ ロに。95年からは Peter Duimelinks と Roel Meelkop が参加し再びグループとなる。 オランダの実験音響を語る上では欠かせない伝説的なグループ。本作は15年ぶりと なるスタジオ録音でカシオVL-1の筐体そのものを全員で演奏している。
track2. Doc Wör Mirran (ドック・ワー・ミラン) / VL-1, SK-5
1985年に Bernard H. Worrick と Joseph B. Raimond がドイツのニュルンベルクで結 成した複合芸術グループ。フランス・デ・ワードは80年代後半から参加し、いくつかのレコ ードでテープ演奏をしている。他には Asmus Tietchens がメンバーに名を連ねたことも。
track3. QST (クー・エス・テー) / VL-1
元々は Maurice van Dongen とフランス・デ・ワードによるアンビエントハウスのプロ ジェクトだった。1994年に1枚のレコードが作られたのみで、その後2014年に再始動 し、それ以降にクラシックなアンビエントハウスによるアルバムを2枚リリースしている。
track4. Quest(クエスト) / VL-1
QSTのアンビエント・サイド・プロジェクトで、フランス・デ・ワードのソロ。1996年から 2014年まで休眠。それ以降は様々な新作をリリースしている。
track5. Howard Stelzer & Frans de Waard (ハワード・ステルツァー & フラ ンス・デ・ワード) / VL-1, SK-5
カセットテープとその再生機器による演奏で知られるハワード・ステルツァーは、数多く の実験的音響作品のリリースで知られたレーベル Intransitive Recordings も運営。 フランス・デ・ワードとのテープ演奏をメインとしたデュオは1994年に始まった。
track6. Shifts (シフツ)/ VL-1
フランス・デ・ワードのソロ・アンビエント・ギター・ミュージックのユニット。かつて日本 でも meme や MSBR のレーベルからリリースされていたことでも知られる。2007年か ら活動は停滞気味だったが、今回カシオコンピのために13年ぶりとなる新作を制作。
track7. Goem(ゴーム) / VL-1
当初はフランス・デ・ワードのソロだったが、ロエル・メールコップが加入して最初のCD 「Stud Stim」が録音され、その後ピーター・ドゥイメリンクスが加入。1995年から2005 年まで活動。
track8. Freiband(フレイバンド) / VL-1
1998年から活動するフランス・デ・ワードのPCベースの電子音楽を扱うソロプロジェク ト。RitornellやBottrop-Boy、Crónica、Monochrome Visionなど欧州の名門レーベ ルより数多くのアルバムをリリースしている。
track9. Surge(サーヂ) / VL-1
フランス・デ・ワードによるプランダーフォニックス(サンプリング・コラージュの一形態) のプロジェクト。これは1998年に制作された未発表のCASIOアルバムから。
track10. Wander(ワンダー) / VL-1, SA-1, SA-3
Freek Kinkelaar とフランス・デ・ワードは Beequeen として活動を共にしていたが、よ りポップな方向性へとシフトすることに決め、同時にそれとは別のドローン・ミュージッ クのサイドプロジェクトを立ち上げることにしワンダーを結成した。
track11. Wieman (ウィーマン) / VL-1
ロエル・メールコップ と フランス・デ・ワードによる Zèbra に続くデュオで、プランダーフ ォニックス・ミーツ・メルトポップのプロジェクト。 「ポップ」「クラシック」または「ガムラ ン」などについてそれぞれの作品の都度「コンセプチュアル」な制作を行っている。
track12. THU20 (テーハーウー・トゥウィンタハ) / VL-1
THU20 は1986年に設立され、フランス・デ・ワードは2007年から加入。他のメンバー は、Jos Smolders、Peter Duimelinks、Sjak van Bussel、Roel Meelkopから成る。 主な活動はライブ演奏で2、3時間かけて行うことが多い。
track13. Bass Communion & Freiband (ベース・コミュニオン & フレイバンド) / VL-1
ベース・コミュニオンはポーキュパイン・ツリーのフロントマンであり、ソロでもXTCやブ ラック・サバス、キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、ウルトラ・ヴォックス等との 仕事でも知られているスティーヴン・ウィルソンによるユニット。フランス・デ・ワードと は2007年以来定期的にコラボレーションを行い数枚のアルバムをリリースしている。
track14. The Tobacconists(ザ・タバコーニスツ) / MT-65
米マサチューセッツで Swill Radio を主宰しながら、 Chris Corsano や Graham Lambkin 等多くの音楽家とコラボーションしてきている Scott Foust とフランス・デ・ワードのデュオ。 2009年にザ・タバコーニスツを結成し、これまで3枚のLPをリリースしている。
track15. Ezdanitoff (エズダニトフ) / MT-45
Wouter Jaspers(Franz Fjodor、 The Jim Morrisons、 Preliminary Saturation など)とフランス・デ・ワードは、2010年からエズダニトフ(「タンタンの冒険」のキャラク ター)として活動しており、即興や作曲のワークショップを中心に演奏を行う。
track16. Modelbau (モーデルバウ) / VL-1, SK-5
カセットテープやオープンリール、ガジェットシンセなど、全てのローファイな事物へ傾 倒する、2012年以来のフランス・デ・ワードのもっともアクティブなソロ・プロジェクト。こ れまでに60枚ものアルバムをリリースしている。
track17. WaSm (ワスム) / VL-1
フランス・デ・ワードとヨス・スモルダースの2014年以来のデュオ。ヨス・スモルダースは オランダの伝説的電子音響アンサンブルTHU20 の創設メンバーとして80年代から活 動する電子音楽家で、EARLabs Studios のオーナーを務め、同名のレーベルも運営。
track18. Tech Riders (テック・ライダース) / VL-1, SK-5
ノルウェーの実験音響作家でレーベル Gold Soundz を主宰する Sindre Bjerga とフ ランス・デ・ワードによる2016年からのデュオで、主にライブ演奏を行っている。即興で はなく、丁寧に構成された楽曲。
track19. Ruisch(ラウシュ) / VL-1
フランス・デ・ワードの最新のビートものに関する興味は、今はよりダブやトリップホップ、 ダウンテンポになっている。
track20. Hyster (ハイスター) / VL-1
Steffan de Turck(Staplerfahrer、 Preliminary Saturation など)とフランス・デ・ワ ードによる緩やかに始まった新しいコラボレーション。両者の父親は共にハイスターとい うフォークリフトの会社で働いていた。
track21. Asuna & Frans (アスナ&フランス) / VL-1
Asuna の2014年の欧州ツアー時に、ダニエレ・ルメールもスタッフであったナイメー ヘンの EXTRAPOOL でのライブで、フランス・デ・ワードがカシオトーンを貸してくれた ことをきっかけにそれ以降にやり取りを重ね、昨年新たなデュオを結成。
cover drawings by Owen Ashworth (オーウェン・アシュワース)
シカゴを拠点とするCasiotone For The Painfully Aloneで知られ、現在はアドヴァン ス・ベース名義で活動し、Julie ByrneやGia Margaretなどを輩出した注目レーベル Orindal Recordsも運営。これまでのカシオトーン・コンピレーションの全ジャケットのカ ヴァー・ドローイングを手がけるこのシリーズには欠かせない音楽家。